ウッドテック構造は、最近よく言われるようになった、躯体(スケルトン)と、しつらえ(インフィル)を別々に考える構造です。このことが強調されるはるか前から、そうした考えにもとづいて開発されてきました。
何故、そういうことが言われるようになったかというと、戦後、欧米の住宅に似せてつくられた、住宅を限定された「ルーム」で考えるというやり方はマズイ、ということが分かってきたからです。耐久性はあっても、暮らしの用に応えられず、住みづらい家になってしまったのです。
西洋の家は、部屋をドアで閉め、プライバシーを尊重します。戦前の住宅はプライバシーがなく、たとえば襖一枚隔てるだけで、両親のすぐ隣の部屋で若夫婦が生活することが強いられていたりしました。これを変えたのはいいのですが、何もかも悪いということになり、戦後、西洋礼賛の住宅志向に舵が切りかえられました。「ルーム」重視ということは、部屋の目的を限定するということです。
細切れの部屋が数珠のように連なるプランが増え、「応接間」などという使わない部屋までつくられるようになりました。子どもにも1人1部屋ということになり、これがどうも教育関係者のあいだで、非行化の温床になっている、という見方がでてきました。
つまり、目的限定別の「ルーム」重視の設計は、日本人の生活に馴染まず、多々問題があり、家の短寿命化の原因ではないかと考えられたのです。
これに対し、「無限定空間」ともいうべき、融通無碍な部屋と部屋が自由に連なる、オープンネスな自在性を持った間取りがいわれるようになり、そうなると、部くだばしら屋を区切るために林立している管柱が邪魔になります。
しかしそれを無造作に外すと建物の強度が心配です。大きな空間は、丈夫な躯体が前提です。こうして、躯体(スケルトン)としつらえ(内装/インフィル)を分けて考える方式がクローズアップされるようになりました。
気づくことは、昔の民家や町家は、躯体としつらえが実に巧みに分かれていたことです。建具や仕切りがうまく使い回され、家族の成長や変化に合わせて対応が可能であり、季節の句読点に合わせて変化可能な家でした。結果において、それが長寿命の家になっていたのです。
ウッドテック構造は、建物の躯体が極めて丈夫に出来ているので、広い空間を実現することが出来ます。そして、生活の変化、家族の変化に合わせて間取りを変えて行くことが出来るのです。それは構造の成り立ちと、空間の区分とが分離して考えられているからです。
日本の住宅の原点回帰が進んでいるとはいえ、しかしそれは、単に昔に戻るということではありません。温故知新というか、旧きをたずね、新しい技術を取り入れ、駆使することです。
木造住宅は、大工棟梁の技量がものをいいます。
職人不足が伝えられるなかで、むずかしい接合部を木工機械でプレカットする技術が導入されました。プレカットは、二方向ないし三方向から梁<横架材>が、通し柱に差し込みます。その部分は、穴が開けられたり、掘られたり、削られたりしますので、断面欠損が生じます。阪神・淡路大震災以降、この欠損部分に破壊の危険性が指摘されるようになりました。そこで従来の倍の代替として、その応力を負担する金物工法が広く用いられるようになりました。
ムク材は、材にバラツキがあるので、金物工法に用いられる材は集成材が主材となりました。
材のバラツキは、材の強度や含水率を管理してこなかった日本の林業に原因の一つがもとめられますが、ムク材に適した金物の開発が行われてこなかったのも事実です。
そのなかにあって、ウッドテック金物構法は、ムク材に適した金物として高い評価が得られています。
ムク材に最適な金物であるということは、集成材にも最適だということです。
人は、もともと森に暮らしていました。木を見上げながら暮らすのは自然なことで、気持ちいいものです。
自然素材としての木を表わしで用い、素朴で、ざっくりとした、骨太い木造空間をもとめられるのが、ウッドワイスラーメンフレームの良さです。
ウッドテック構造のフレームは、メインフレームとサブフレームによって構成されます。メインフレームは、メイン柱(通し柱や柱勝ち柱)と、メイン梁(大梁)をいいます。メインフレームで構成された区画(構造グリッド)を構造の基本単位とし、架構全体を考えます。それによって、カの流れを無理なく伝達することができ、構造的にも安定した建築となります。
理想の構造は、力の流れをダイレクトに表現し、力の流れがみえることです。ムリのない力の流れは美しい架構のプロポーションを生みます。架構の規則性やリズムが見事に内部空間と一体になった建物はそれだけで惚れ惚れとします。
建物の力の流れを考える場合、まず主要構造部材(メインフレーム)が、各加重、外力によって発生する応力の組み合わせに対して、安全かどうかを確認する必要があります。建物は、建物に掛かる荷重(重量による鉛直力/固定加重。積載加重、積雪加重)と、外力(風圧力・地震力)を受けます。これらは、建物に対して単独に作用するのではなくて、いくつかが同時に組み合わさった形で作用します。
扱う材料は木です。木は、繊維方向の軸力に強く、柱はその特性を活かしています。また梁は、木が持つ曲げ強度(木の細胞は幹の長軸方向に無数のパイプを束ねたような構造になっている)の利点を活かして、横に架け渡します。柱間の間隔は梁の長さと大きさによって制限されますが、それに沿ってプランを立てることで整合されます。
またサブフレームは、サブ柱(管柱)とサブ梁(小梁)から成ります。サブ梁の接合部はウッドテック金物で緊結されますが、サブ柱の柱頭柱脚は、木構法の仕口、ほぞ(一方の材端につくる突起。他方の材にこの突起を差し込むほぞ穴をうがって両者を合せる)加工によって緊結します。これは施工も簡単で、後に述べる「さくりはめのテラパネル」を建て込む時にも好都合です。
ウッドテック構造が、サブ柱の仕口をほぞ加工にしているのは、梁せいの大きさ(胴差せい300ミリ桁せい240ミリが標準)にもよります。水平荷重による管柱にかかる引抜き力が、それによって軽減されます。
ウッドテック構造が、現場の大工に支持される理由の一つに、先端技術と、大工にとって慣れ親しんだこの伝統的な仕口接合とが融合され、活かされていることが挙げられます。これまで、接合金物は集成材には適しているけど、ムク材の割れなどに対して不安があるとされてきました。しかし、ウッドテック金物は金物自体の工夫と伝統技術を融合させることによって、この難問を解決しました。
ウッドテック金物は、構造の基本となる骨格部分に用います。
例えば、耐力の必要な梁の端部や、通し柱と梁の接合部の断面欠損が大きいところなどは、一般的には羽子板ボルトや引きボルトなどが併用されていますが、この弱点を解決しているのがウッドテック金物で金物接合を必要としない管柱や土台の継手告などには、「ほぞ」や「あり」などの伝統の加工をそのまま残すことにより、適材適所の用い方をしているのです。
金物と伝統技術の融合から生まれるフレーム
ムク材を使って、構造的な安定と美しい架構のプロポーションを併せ得たのは、金物と伝統技術の融合が成した、現代の匠ともいえる「ワザ」にあります。それは、時間軸に囚われず適材適所の接合方法を極めた証でもあります。
木造住宅のために開発され、数々の試験を重ねながら、改良をくりかえし50年の歳月をかけて作られた、ウッドワイステクノロジーの金物。
安心·安全な住まいのために考えられた、命を守る金物です。
ウッドテック金物·ウッドワイスラーメン金物は、ともに金物の下部に「受けサポート」があります。
これは、大工さんが建て方をするときの位置決めを確実にするとともに、
①金物と柱,梁の接合した部分のせん断力を高める
②金物周囲の割れを防止したり
③初期剛性と地震後の復元力を高める機能となります。
また、火災の時には、金物スリット溝へのファイヤーストップ効果で、倒壊を防いだことも確認されました。
東日本大震災においては、石巻市の15年前の物件で、大津波における建物の残存も確認されています。
さらに、現在まで数多くの破壊試験や、独立法人つくば防災科学研究所での公開実大耐震試験では阪神淡路大震災の2倍(1600ガル)の激震にも、ビクともしない耐震性に優れた住宅であることが証明され、鉄骨と同等の強度が実証されています。
金物スリットのみの部位は崩壊
金物の受けサポートが建物の倒壊を防ぎました。
鉄は500~800℃で軟化し、アメのように曲がってしまいます。
ウッドテック金物は、無垢材に対応した金物として作られました。
杉無垢材を使用し、最大荷重87kNでも破壊や割れが起こらないことが試験実証されています。無垢材の場合でも安心·安全な品としておすすめできます。
(外層米松、内層杉を貼り合わせたハイブリット集成の梁と杉集成材の柱を使い、ハウスプラス確認検査機関にて破壊実験を行った。)
ウッドテック金物の試験体6体には、柱の割裂が発生していない。
変位が10㎜を超えたところで最大荷重に達し、そこから横ばいか、緩やかに荷重が低下する傾向がみられ、粘りがあることが証明されました。
荷重が68kNに達していても梁に亀裂が見られない。
柱繊維方向に沿って、柱の芯でボルトで固定している金物は、終局時、柱の割裂で破壊している。
初期剛性は強いが、最大荷重に達した後は、粘りがみられず急激に荷重が低下している。
梁の木口から近くにドリフトピンで固定している金物は、荷重が58kN程度でも梁に亀裂が発生している。